「頸椎椎間板ヘルニアや頸椎神経根症の手術を受けるべきどうか?」また「手術を受けたとして実際にはどこまで回復するのか?」の一例を知り、各々が判断材料にできると思います。
筆者自身は多発性ヘルニアでこれまでに3回の頸椎神経根除圧の手術を受けました。最初の手術から約9か月が経過しました。現在は残されている(まだ手術をしていない椎間孔)神経根症と手術して圧迫を解除したものの、筋委縮による筋力低下が原因と推測できる右肩から右手(特に人差し指)への痛みと痺れが残っています。
頚椎椎間板ヘルニア・神経根症の手術前の体の歪みと手術後の変化(回復度合い)について書いています。手術を受けた方の次の目標は「回復」です。皆が「元通り」を望むでしょう。果たして、実際はどうなのでしょうか?
最初の手術直後の回復具合
最初の手術は「右C6/7」の顕微鏡下頚椎前方椎間孔拡大術でした。MacF(Microsurgical anterior cervical Foraminotomy)と呼ばれる術式です。
手術を受けたのは2018年10月下旬でした。
手術の効果は驚くほどです。麻酔から覚めた直後に、それまで夜も眠れないほどであった首・肩・腕・指の痛みがほぼ消えていました。消えていたという言葉がピッタリです。
手術翌日の問診では、右手人差し指と中指に痛みと痺れが残っていると回答したことを覚えています。この痛みと痺れは術後9か月経った現在でも残っていますが、手術前の激しい痛みや痺れと比較すれば、どうということはありません。明らかに回復しつつあります。
C6/7神経根の圧迫による本人自覚症状は、「痛みと凝りが、首右後ろ・右肩後ろ・右腕の外側後ろ寄り・右人差し指の手の甲と指先」「筋委縮及び力めないのが、右肩甲骨回りの筋肉・右上腕三頭筋(長頭)・右手(握力低下)」でした。
これらすべてにおいて、手術直後(手術前ではありません!)と現在(9か月後)の症状を比較すると、右手人差し及び中指の痺れは大きく回復したという感じはありません。僅かに改善しているとは感じます。筋力の回復具合は約50%と思います。サイズも萎縮前後の比較で半分程度の回復です。
損傷した神経は簡単には修復されないということでしょう。圧迫されていた期間が長かったので、神経が修復不可能な状態となっていることも十分にあります。筆者が早めの手術を勧めるのはこれが大きな理由です。経過観察や自然治癒を期待して時間をおいてしまうと回復できないのです。
つまり、身体の歪みを抱えたままこれから先の人生を過ごしていくことになります。身体を動かすことが好きでスポーツやジムでトレーニングをしている人にとっては上達の妨げになりますので辛いことでしょう。また、凝りや痛みにも悩まされることと思います。
神経の回復の可能性については三石巌氏に著書で学んだ分子栄養学の知識を参考にして別の記事で書いてみたいと思います。
手術を受けるまでの症状や病状の経過については以下の記事をご覧ください。この記事の中の「本人による自覚症状」には症状の進行具合も分かるように書いてあります。
最初の手術後9か月後かつ、三回目の手術3か月後の回復具合
肩から腕にかけての痛み、指先の痺れ、が残っています。
萎縮や筋力の低下がみられた筋力は、自己基準で50%程度回復しました。
神経根の除圧手術を受けるとヘルニアによる神経痛や痺れはすぐに良くなります。すぐに無くなることはありませんが、筆者の場合でも術後に90%の痛みと痺れは消えました。これは月日の経過とともに良くなっていきます。完全に無くなるのかは、わかりません。書いている本人も経過を見ているところです。
筋力は簡単には戻りません。損傷した神経の回復には時間がかかります。筋力や筋委縮が回復してこないのは、やはり支配神経の損傷に原因があるのでしょう。
統計データによると、脊髄でない神経の損傷は術後一年の間で一定の回復見込みがあるようです。しかし、一年以上たっても回復が無いケースではその後の改善は期待できません。
手術後、頸椎を安定して動かせるようになると、左右の筋力差を感じ取れるようになり、どこに力が入らないのかわかると思います。私の場合は右半身の「広背筋・大胸筋・小胸筋・肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・前鋸筋・上腕三頭筋」は明らかに筋力低下があり、外から見える筋肉には萎縮があります。筋肉は単独で動作せず、必ず連動します。キネティックチェーンと言われます。ある筋肉が衰えると当然それに連動する筋肉も衰えます。
これによって脊椎の回旋と側弯がもたらされます。姿勢が崩れます。身体全体の重心を片方の足で支えるようになりますので、歩くと跛を引くように見えます。
私の場合、右の腹圧が抜けているような状態となり、腹圧で体幹を固めることができません。左足は母指球に重心がかかっており、右足は外側踵よりに重心が乗っています。
腰痛と肩こりが付いて回ります。脊椎や頸椎のアライメントが崩れたままですので、椎間板ヘルニアや神経根症の再発もあり得ます。
筋力低下と身体のアライメントや腰痛については以下に参考記事があります。
残っている痛みと痺れは肩関節周囲炎・胸郭出口症候群かもしれない
右半身の筋委縮と筋力低下による身体への影響が回復しておらず、右肩を安定させることができません。肩甲骨を上手く固定できないと表現すればいいのかもしれません。肩回りに影響する筋肉全てを上手く働かせることができないのです。これによってなのか、肩関節周囲炎や胸郭出口症候群で診られるのと同様の症状が著しく残っています。肩周りの関節がずれてしまうことで骨や筋肉が神経や血管を挟んだり、関節そのものに負担がかかっているのでしょう。
例えば、右手で左の肩を触ろうとすると、右肩から右手の指(時に親指人差し指、時に小指薬指、時に手全体)に激しい痛みが走り、脱力します。
整形外科か脳神経内科を受診して原因を突き止めたいところです。
結局、治ったのか?
頚椎ヘルニア・神経根症になる前の状態に治ったかと言えば「ノー」ですが、著しく改善しました。手術をした神経根の圧迫は完全に解除されていますが、圧迫によりダメージを受けて損傷した神経や、筋力低下によって不安定から引き起こされる関節の損傷は、完全に修復されない、元に戻らないということです。
実際の患者の意見として以前の記事でも書いていますが、スポーツや登山やゴルフなど、身体を動かすことを楽しみたいという人は、症状が出たら早めに手術をお勧めします。