2019年6月13日から19日までオーストラリアの経済動向を調査してきました。その報告を簡単に纏めています。ニューサウスウェールズ州は順調に経済成長を続けています。私は1995年頃にQLD州に在住でしたが、当時と比べて不動産価格や物価が3倍以上になっていることに驚きました。
オーストラリアは人口増加を背景として強気の投資戦略です。実質経済成長率は1991年の7-9月期から2019年1-3月期まで111四半期連像で世界最長記録を更新中です。人件費は日本の2倍弱、電気代も倍ぐらいです。不動産も高いです。この国は現地で実業をするよりも資金の投資先として考える方が良いと思います。銀行金利は日本より大分良いです。
主な日豪関係概略
1874年(明治7年) 日本人初の真珠貝採取の移民が木曜島へ
1879年(明治12年) シドニー万博博覧会への参加
1880年代 和歌山県から木曜等島に多数の真珠採取者
1890年(明治23年) 兼松シドニー支店の開設:羊毛、牛脂、牛皮の輸出
1896年(明治29年) 横浜とメルボルン定期航路の開設、タウンズビルに領事館設置
1897年(明治30年) 横浜とシドニー定期航路の開設、シドニーに領事館設置
1901年(明治34年) オーストラリア連邦成立、シドニー日本総領事館設置
1915年(大正4年) 横浜正金銀行シドニー出張所開設
1941年(昭和16年)12月 日本軍がダーウィンを爆撃
1942年(昭和17年)2月19日 日本軍特殊潜航艇によるシドニー湾攻撃
1944年(昭和19年)8月5日 カウラ捕虜収容所で日本軍捕虜が暴動
1951年(昭和20年)8月 太平洋戦争終戦
1957年(昭和32年) サンフランシスコ講和条約
1957年(昭和32年) 日豪通商協定署名(於箱根)
1963年(昭和38年) 日豪経済委員会第1回合同会議(於東京)
オーストラリアとニューサウスウェールズ(NSW)州
全豪州
面積約769万キロ平方メートル(日本の約20倍)
人口約2,510万人
GDP/GSP 1兆8,145豪ドル
NSW州
面積約80万キロ平方メートル(日本の約2倍)
人口約802万人
GDP/GSP 5,933億豪ドル
NSW州の好調な経済
NSW州は経済成長を続けており、2018年/2019年度のGSP成長率は2.75%程度と予測。成長率、始業率ともに全豪平均より良好。州財政も14億豪ドルの黒字。NSW州の過去10年間の平均失業率は5%前後。NSW州GSPは2007年に4346億豪ドルだった。2018年は5933億豪ドル(約1.7倍)。
出典:Australian Bureau of Statistics(https://www.abs.gov.au/)
日・NSW州貿易
NSW州にとって日本は世界第2位の貿易相手国。輸出先として1位、輸入元として3位)。
日本は主に石炭を輸入、日本からは主に自動車を輸出。
出典:Australian Goverment Depertment of Foreign Affairs and Trade(https://www.abs.gov.au/)
日本の対豪直接投資とNSW州
日本から豪州へ多様な分野において投資が行われている。日本は第二位の直接投資残高を有する。一位は米国。TPPにより、これが変わるかもしれない。
2001年の各国対豪投資
- 米国 688億豪ドル(シェア28.4%)
- 英国 488(19.9%)
- 日本 163(6.7%)
- シンガポール 149
- オランダ 105(4.4%)
- ドイツ 61(2.5%)
- ニュージーランド 54(2.2%)
- ベルギー 29(1.2%)
- カナダ 22(0.9%)
- 香港 17(0.7%)
総合計2,422億豪ドル
2017年の各国対豪投資残高
- 米国 1899億豪ドル(シェア22.4%)
- 日本 925(10.9%)
- 英国 831(9.8%)
- オランダ 535(6.3%)
- 中国 407(4.8%)
- カナダ 354(4.2%)
- シンガポール 263(3.1%)
- 香港 259(3.1%)
- バミューダ諸島 255(3.0%)
- ドイツ 238(2.8%)
総合計8,491億豪ドル(※2001年の約3.5倍)
近年の大型買収の例
- 2019年4月 日本ペイントによる塗装・DIY用品大手のDuluxGroupの買収発表(38億豪ドル)
- 2019年2月 日清製グループによる製粉大手アライドピナクルの買収発表(5.7億ドル)
- 2018年10月 三菱UFJ信託銀行によるコモンウェルス銀行傘下の投資会社の買収発表(40億豪ドル)
- 2018年8月 第一生命による保険大手サンコープ生保部門の取得発表(6.4億豪ドル)
- 2018年4月 三井物産による石油天然ガス資源開発AWE社の買収(5.8億豪ドル)
- 2016年10月 日本生命によるMLC生保事業の買収(24億豪ドル)
- 2015年5月 日本郵政によるトールグループの買収(65億豪ドル)
- 2012年1月 国際石油開発帝石によるイクシスプロジェクトへの最終投資決定(247億米ドル)
- 2011年5月 第一生命によるTALの買収(12億豪ドル)
- 1998年~2012年 キリンによる豪州飲料会社(ライオン社等)の買収(累計88億豪ドル)
西シドニー開発
- 西シドニーは豪州第三位の経済規模を持つ地域。人口は今後300万人から400万人に増加。
- シドニー首都圏の中でパラマッタと西シドニー空港周辺を2つの新たな都心とする計画。
- NSW州政府は、日本企業等との間で4つのMOUを締結。(三菱重工業株式会社、三井住友フィナンシャルグループ、日立製作所、都市再生機構)
パラマッタ市周辺の開発
パラマッタは豪州でシドニーに次いで二番目に古い都市。豪州最大の医療研究:集約地区。パラマッタライトレール、新鉄道などのプロジェクトが進められている。
西シドニー空港周辺の開発
西シドニー空港(2026年創業開始に向け建設中)周辺の開発のため、連邦・州政府・8つの地方自治体により「西シドニー都市協定」が2018年3月に締結された。鉄道や空港都市開発プロジェクトが進められている。
※Western Sydney City Deal(https://www.nsw.gov.au/improving-nsw/projects-and-initiatives/western-sydney-city-deal/)
(c)Western Sydney City Deal, NSW Goverment 2018
(c)Western Sydney City Deal, NSW Goverment 2018
(c)Western Sydney City Deal, NSW Goverment 2018
農業協力と日本食品の普及
2018年11月の安倍総理のダーウィン訪問時、日豪の季節が逆であることを利用した生産協力と国際市場への輸出拡大を表明。農林水産省は各州と農業協力に関する覚書を締結。
- 2017年1月、北部準州一次産業・資源省と農業分野における協力体制を構築のための覚書署名
- 2018年11月、NSW州第一次産業省と農業協力に関する覚書を発表
日本産食品の輸出拡大に向けたPRと日本食の普及推進
2018年は、和牛が17年ぶりに輸入再開、下記の権益条件の整理により柿(和歌山県産)が初めて豪乳に輸入される。
日豪間の旅行者数
- 日豪間の旅行者数は、近年堅調に増加。2018年の豪州からの訪日者数は約55万人。平均宿泊数は13泊と長い。平均旅行支出額は24万2千円で首位。リピーターが多い。
(出典:日本政府観光局(JNTO)及び観光庁) - 2010年は日本から豪州へは約40万人弱、豪州から日本へは約22万人。2018年は日本から豪州へは約46万人、豪州から日本へは約55万人で2倍以上の増加。
- 2015年にANAが羽田・シドニー便を就航。現在はJAL、ANA、カンタスの3社が日本・シドニー間の直行便を運航。2019年9月よりJAlが成田・メルボルン便、同年12月よりカンタスが大阪・シドニー便を運航。2019年9月にANAが成田・パース便を就航予定。2019年12月に3月末までのスキーシーズン限定でカンタスが札幌・シドニー直行便を就航予定。
豪州における留学ビジネス
- 豪州の大学の留学生は43.1万人(2017年、大学生全体の28.5%)。
その中で特に中国(台湾及び特別行政区は除く)の占める割合が33%。 - 留学生の支払う学費は大学収入の約23%を占める。NSW州の場合は26%。(2017年)
2017年‐18年度の教育輸出は330億ドルであり、鉄鉱石、石炭に次ぐ第3位の輸出分野。
留学生の生活費
学生ビザの取得に当たって豪州内務省は一定の経済力を求めている。その中には学費の他、学生の生活費として「20,290豪ドル/年」と言った費用などが含まれる。(※2018年2月見通し)
学費の例
2019年シドニー大学法学部1年生1年間の費用は
- 国内学生10,958豪ドル(学生拠出金:Student contribution Amount)
- 留学生42,000豪ドル(授業料:Tuition Fee)
住居費の例
シドニー市
- 1ルーム、400豪ドル/週
- 1ベッド、565豪ドル/週
ウーロンゴング市(シドニーより南に約82km)
- 1ルーム、200豪ドル/週
- 1ベッド、278豪ドル/週
日本語教育等
日本語学習者(初等、中等、高等教育)は2015年度調査において全豪で357,348人(※5歳から24歳の人口7,352,996人。2016年豪州統計局調べ)。NSW州では56,380人(※5歳から24歳の人口1,859,291人。2016年豪州統計局調べ)。それぞれ2012年度調査と比較して、60,676人、8627人の増加。
他言語との比較
NSW州公立の初等・中等教育における学習者数は以下の通り。
- 2014年は日本語37,073人、中国語28,704人。
- 2015年は日本語39,073人、中国語29,842人。
HSC(High School Certificate=NSW州の大学入学統一試験)における受験者数(2018年)
- 日本語受験者数1,609人(男性610人、女性999人)
- 中国語受験者数1,016人(男性445人、女性571人)
- 韓国語受験者数213人(男性47人、女性166人)