ここ数年、ボディメイク・医療・健康・栄養・等々の分野で何かと話題に上がるケトジェニックダイエット(KD)。
一般的には
という方法だと書かれていますが、これは痩せたい人に受けが良くなるように誇張されています。というか、わざと誤解を与えるような表現です。
正解はこちら↓
いざ、実際に始めようと思うとすぐにいくつかの疑問が湧いてきます。
ケトジェニックダイエットを始めようと思った時に浮かぶ7つ疑問
- 総摂取カロリーはどうやって設定するのか?無制限に食べても良いの?
- 脂質とタンパク質の割合は?
- 炭水化物(糖質)はどのくらい摂ってもよいのか?
- 本当に体脂肪を効率良く減らせるのか?
- 糖質を制限することで頭はボーっとしないのか?
- 何日間続けるのが良いのか?
- 一日何食に分けて食べるのが良いのか?
以下では、これらを順番に説明していきたいと思います。
総摂取カロリーはどうやって設定するのか?無制限に食べても良いの?
まず、自分自身の基礎代謝を計算する数式があります。基礎代謝に日常生活でどのくらい体を動かしているかの係数を掛けると、おおよその消費カロリーを求めることできます。それを一日の総摂取カロリーとするのが良いでしょう。巷ではいくら食べても良いという記事を見かけますが、消費カロリー以上に摂取すれば必ず脂肪が付きます。そうです。太ります。
Harris-Benedict式
男性:88.362 +(13.397 × 体重kg)+(4.799 × 身長cm)—(5.677 × 年齢)
女性:447.593 +(9.247 × 体重kg)+(3.098 × 身長cm)—(4.330 × 年齢)
Katch-McArdle式
除脂肪体重が分かる方はこの式の方が簡単です。
男女共通:370 + (21.6 × 除脂肪体重 kg)
体重65kgの場合の基礎代謝と消費カロリー
上記の式を用いて私の場合を参考に計算します。
昨日、ジムでワークアウト後に体重計に乗ったところ約67kgでした。この時は2リットル以上の水を飲んでいたので、その分を差し引いで約65kgとしましょう。
【基礎代謝】
男性:88.362 +(13.397 × 65kg)+(4.799 × 174.6cm)—(5.677 × 48)
=1524.5764(kcal)
消費カロリーはを求めるために係数を乗じて、
【消費カロリー】
1524.5764(kcal)×1.2(デスクワーク中心の生活)~1.55(週3回から5回の中程度の運動)
=1829.49168(kcal)~2363.09342(kcal)
ここで1.2と1.55の両方で計算しているのは運動強度による影響の範囲を知るためです。
※運動強度係数については別の機会に記事にしたいと思います。
これはあくまで指標です。人間はそれぞれ全く違うので、自分自身で適切な数値を見つけることが大切です。実際に増量した経験のある方や減量した経験のある方は、その時の摂取カロリーを参考にするとよいです。
ケトジェニックダイエットにおける自分の目標摂取カロリー
私の場合、
- ワークアウトをした日:2700kcalから3300kcal
- 休養日:1800kcal前後
でした。
ケトジェニックダイエットはカロリー制限メインの場合と違うので、まずはこの摂取カロリーを変えずに試してみたいと思います。
参考:増量時の摂取カロリー計算
因みにこんな便利なサイトがあります。
Weight Gain Calculator(https://www.freedieting.com/weight-gain-calculator)
これは増量のためのカロリー計算です!
脂質とタンパク質の割合は?
ワークアウトをしている人としていない人で分けて考えると良いと思います。ワークアウトをして筋肉を増やそうとしている方は必要となるたんぱく質の量が多くなるので、それを考慮に入れます。
ワークアウトをしていない人の場合
脂質:タンパク質=2:8
これでなければならいということではありません。これぐらいが良いだろうということです。これはカロリー比率です。脂肪を9kcal/g、タンパク質を4kcal/gで計算するといいでしょう。
ワークアウトをしている人の場合
タンパク質を4割程度まで増やしても良いと思います。ただし、除脂肪体重の2.2gぐらいまでを上限とします。タンパク質を増やしすぎると糖新生によってエネルギーが賄われてしまい、脂肪をエネルギーとして消費しにくくなると言われています。
私の場合「脂質:タンパク質=6:4」で試算すると…
脂質=2700kcal×6÷10÷9=180g
タンパク質=2700kcal×4÷10÷4=270g
これでは除脂肪体重を60kgとして考えたときにタンパク質の量が多すぎます。60×2.2=132gをタンパク質の上限として考えると脂質は約241gです。
脂質=(2700kcal-132g(タンパク質)×4kcal)÷9=241.33g
タンパク質を4割というのは増やしすぎという意見もあります。一方、多少タンパク質が多くてもMCTオイルを取り入れると、ケトン体をエネルギーとする代謝モードに上手く切り替わるという考え方もあります。実際には最も効果的な資質とタンパク質の割合は人それぞれです。日常の運動量やトレーニング強度や体質、等々、に依ります。唯一の正解はありません。自分自身に最適となるように自ら調整することが大切です。
炭水化物(糖質)はどのくらい摂っても良いのか?
一般的には一日の炭水化物摂取量を20gから50gにすべきと言われています。角砂糖でいうと5個から12個(約4g/個)となります。ご飯100gに対して炭水化物は約40g含まれています。糖質の摂取量はケトジェニック成功の重要な要素です。
根菜には多くの炭水化物が含まれていますので、避けるのが良いでしょう。
本当に体脂肪を効率よく減らせるのか?
実は「ケトジェニックダイエット=炭水化物を極端に減らす」という点だけに注目すると失敗する可能性があります。成功の鍵はインスリン(インシュリン)のコントロールにあります。
どれだけ早くケトーシスに移行できるかが重要なので、徐々に炭水化物を減らしていくのはよくありません。始めるときは一気に炭水化物(糖質)をゼロにした上でインスリンの分泌を促し、インスリン感受性も高めることが必要です。これにより血糖値が急激に下がって速やかにケトン体を代わりのエネルギーとして使うようになります。
中途半端な糖質制限はケトジェニックダイエットを失敗させます。糖質制限によって失われるエネルギーを補うためには十分な脂質を摂取してください。糖質も脂質も不足していると体は糖新生によって筋肉などのタンパク質を分解してエネルギーを作り出します。(何が何でも体重を落としたいという人はこれでもいいのですが、筋肉が失われてしまうのでリバウンドしやすくなります。)
ケトジェニックダイエットでは、体が糖を必要とするTCA回路を使わずに、ケトン体をエネルギーとする回路を使うように仕向けます。
ケトン体を体内で作り出すためにはアセチルCoAが必要です。つまり脂質が足りないとケトーシスになりにくいのです。脂質が足りないことに加えて糖質も制限していると、ケトーシスにならずに糖新生ばかりが活発になります。通常、アセチルCoAは糖代謝、脂肪代謝、アミノ酸代謝、の過程で産生されます。炭水化物(糖質)を減らすと糖代謝によって算出される分のアセチルCoAが不足します。これを補う十分な脂質が必要です。
ケトン体はケト原性アミノ酸からも作られます。糖原性アミノ酸は糖新生に向かいますので、ケト原性アミノ酸を摂取することでケトーシスへの移行を助けることができます。ヒトにおけるケト原性アミノ酸はロイシンとリシン(リジン)です。
糖質制限をすることで頭はボーっとしないのか?
これはケトジェニックダイエットに限った話ではありません。一般的なダイエットをしたことのある人には経験のあることだと思います。
Cahill GF Jr1.の論文「Fuel metabolism in starvation.(Annu Rev Nutr. 2006;26:1-22)」(PDFファイル)によると、糖質摂取がゼロに近い状態では、糖新生によって賄われる糖質は80g/日です。ケトーシスになっていない、つまり糖質でエネルギーを賄っている場合は脳だけでも120g/日必要だとのことです。
この必要量が賄われていないとエネルギー不足によって頭がボーっとしたり、空腹感に耐えられなくなったりすると思われます。
十分に脂質を摂取することでエネルギー不足が起きないようにすれば、この問題からは解放されます。糖質を摂取しないからだという意見もありますが、最低限必要な糖質は糖新生によってまかなわれるはずです。
細胞のエネルギーはミトコンドリアで生み出されます。これは筋肉でも内臓でも脳でも同じです。その燃料はグルコースかケトン体です。グルコースは糖質から賄われますが、グルコースが枯渇した状態の時にはケトン体に切り替わります。ケトーシスの状態です。この時、ケトン体は脳の主要なエネルギー源となります。
コーヒーなどのカフェイン飲料と一緒にMCTオイルを摂取することで、カフェインの効果とMCTオイルによる速やかなエネルギー供給により、頭がボーっとするという問題を避けやすくなると思います。
- Ketone body utilization by cytosolic acetoacetyl-CoA synthetase is novel target of obesity-induced disorders of lipid metabolism Masahiro YAMASAK(肥満による生体内代謝異常の新たなターゲット:細胞内ケトン体利用経路)
- Metabolic Effects of the Very-Low-Carbohydrate Diets: Misunderstood “Villains” of Human Metabolism
何日間続けるのが良いのか?
ダイエットとしては目標体重まで続けるということになりますが、どのようなダイエットでも同じ方法を続けると体が慣れてきてあまり体重が減らくなってきます。
山本義徳氏は3週間おきにケトジェニックダイエットと通常食を取り入れているそうです。
糖質を断ち、身体がケトーシスに入るまでの期間は2日~2週間と言われています。ケトーシスに入ってから一か月ぐらいをケトジェニックダイエットの期間として設定するのをお勧めします。そこで目標体重に達してれば終了。もう少し落としたければローカロリーダイエットに切り替えて身体が慣れないようにすると良いでしょう。
一日何食に分けて食べるのが良いのか?
ボディメイクをしている人は一日5食から6食ぐらいに分けて食べる方が多いのではないでしょうか?これは空腹(エネルギー不足)によるカタボリックを防ぎ、血中アミノ酸濃度を常にいて居に保ち骨格筋の合成を促す、という考え方です。
ケトジェニックダイエットの場合は脂質中心の食事になります。脂質は炭水化物よりも長時間エネルギー供給をします。ですので、一日食、5~6時間おきの食事で良いでしょう。
また、ケトジェニックダイエットではなくとも、近年の研究ではバルクアップを目指すときには一日3回程度の食事の方が骨格筋の増加が得られたという結果もあります。
- 6回に分けるよりも3回の方がLBM(Lean Body Mass、除脂肪体重)が大きくなった。
- 血中アミノ酸濃度を常時一定に保つと骨格筋が抵抗性を示すようになり骨格筋合成の亢進率が下がる。
参考文献
ケトジェニックダイエット初日の朝食メニューと総カロリー
初日の朝食メニューです。今日から始めることを前日の夜に決めたので、食材の準備が足りず、PFC摂取目標に対して脂質が足りていません。
- 納豆1パック(45g)
- めかぶ1パック(40g)
- 卵(全卵)1個(60g)
- 鰹たたき(100g)
- チェダーチーズ(30g)
- MCTオイル[C8,C10](13g)
- コーヒー1杯(180㏄)
合計カロリー:525kcal
「カロリーslim」(https://calorie.slism.jp/)を使うと簡単にカロリーとPFCバランス(タンパク質・脂質・炭水化物、のバランス)を計算できます。
サプリメントの力を借りてケトジェニックダイエット健康的に効率よく行う
食事に加えて、私はサプリメントを飲んでいます。
ケトジェニックにおすすめのサプリ
ケトジェニックダイエットは脂肪を多く摂取します。それが体内で酸化されると脂肪酸となって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。また、糖質を制限することでインスリンの分泌が制限されるので筋力トレーニングをしている人は筋肥大しなくなるのではないかという心配をするのではないでしょうか。これらをカバーするために以下のサプリメントをお勧めします。
- αリポ酸
- マルチビタミン
- CLA
- ビタミンE[トコフェロールとトコトリエノール]
- CoQ10
- BCAA
これで完璧というわけではありません。他にも飲んだ方が良いサプリメントはありますが、それら全て摂取しようと思うと費用も馬鹿になりません。サプリメントについては、その摂取量も気になるところだと思います。別途記事を書きたいと思います。